専利民事行政交錯事件の処理に関する実務(wù)
北京市集佳法律事務(wù)所 戈暁美
専利権侵害訴訟において、本訴の権利基盤(pán)の効力に対して無(wú)効審判を請求することが、被疑侵害者の重要な抗弁事由である。専利の無(wú)効審判請求はしばしば専利権侵害訴訟手続きの中止をもたらすだけでなく、中國で実施されている民事?行政二元分立體制および専利権確定制度の多くの特徴に基づき、専利権侵害訴訟の一審、二審さらには再審と専利無(wú)効手続きの無(wú)効段階、審決取消訴訟の一審、二審さらには再審段階が、交錯し合い、関連し合う狀況がしばしば発生する。
専利権侵害と専利無(wú)効手続きが関連する問(wèn)題を解決し、専利権侵害紛爭の審理効率を向上させ、審理期間が比較的長(cháng)いという問(wèn)題をできる限り解決するため、2016年に施行が開(kāi)始された《司法解釈二》第2條【1】では「先行裁駁、另行起訴(専利権侵害訴訟において、國家知識産権局(専利復審委員會(huì ))が係爭専利権の無(wú)効審決を下した後は、専利権侵害紛爭事件を審理する法院は審決取消訴訟の最終結果を待たずに先に訴えを卻下する裁定を下し、別途提訴する方式により権利者に司法救済手段を提供することができることをいう――訳注)」制度が定められている。本文では複數の典型事例を組み合わせ、権利者および被疑侵害者が當該制度を用いて専利民事行政交錯事件を処理する場(chǎng)合の複數の実務(wù)経験を分析、総括し、読者に紹介する。
一.専利無(wú)効審査の結果が訴訟手続きに及ぼす影響の分析
専利無(wú)効審判審決の結果は、専利権の全部無(wú)効、専利権の一部無(wú)効、専利権の有効性の維持の3種類(lèi)に分けられる。
?。?)「全部無(wú)効」については、《司法解釈二》に定める「先行裁駁、另行起訴」制度が明確な指針となっている。つまり、権利者が専利権侵害訴訟において主張する請求項が専利復審委員會(huì )に無(wú)効とされた場(chǎng)合は、専利権侵害紛爭事件を審理する人民法院は権利者の當該無(wú)効請求項に基づく訴えを卻下する裁定を下すことができる。
?。?)「専利権の有効性の維持」については、比較的簡(jiǎn)単である。権利侵害紛爭を審理する法院はいかなる影響も受けることなく権利侵害事件の正常な審理を継続することができる。
?。?)しかし「一部無(wú)効」については、有効部分と無(wú)効部分を區別して取り扱う必要がある、つまり有効部分は審理を継続し、無(wú)効部分は訴えを卻下する処理方式が採られる。
例えば、上訴人の深セン市雲充吧科技有限公司と被上訴人の深セン來(lái)電科技有限公司の実用新案権侵害紛爭事件【(2019)最高法知民終350號】【2】における、最高人民法院の見(jiàn)解は次のとおりである。専利権侵害訴訟期間に、係爭専利の請求項の1件または複數の並列技術(shù)方案に対応する部分は無(wú)効とされたが、それ以外の並列技術(shù)方案に対応する部分は依然として有効性を維持し、専利権者が請求項の依然として有効性を維持する部分に基づき引き続き権利を主張する場(chǎng)合には、人民法院は無(wú)効とされた部分の請求項について訴えを卻下し、有効性を維持する部分の請求項について審理し、裁定?判決を下すことができる。
上述の事例では並列技術(shù)方案の一部が無(wú)効とされ、一部が有効性を維持する場(chǎng)合について論じられているが、當該処理方式は同様に一部の請求項が無(wú)効とされ、一部が有効性を維持する場(chǎng)合にも適用される。
二.権利侵害訴訟手続きの権利者のための注意事項
権利侵害訴訟手続きの権利者にとって、その主張の根拠となる請求項が有効性を維持することが極めて重要である。実務(wù)において、専利権の有効性を維持するために、権利者は無(wú)効手続きにおいて請求の範囲を変更する可能性があり、変更方式には請求項の削除、技術(shù)方案の削除、請求項のさらなる限定、明らかな誤りの修正などがある。
専利の無(wú)効審判手続きにおける異なる変更方式および異なる結果について、権利侵害訴訟中の権利者は以下の點(diǎn)に注意する必要がある。
1.主張の根拠となる請求項に変化が生じた場(chǎng)合は、速やかに権利侵害紛爭事件を審理する法院に権利基盤(pán)の変更を主張しなければならない。
《司法解釈一》第1條によると、権利者は権利基盤(pán)を変更する必要がある場(chǎng)合は、一審の法廷弁論が終了する前に変更を主張する必要がある。したがって、「無(wú)効審判審決」が権利侵害訴訟の一審の開(kāi)廷日以前に下された場(chǎng)合は、権利者は一審の法廷弁論が終了する前に権利基盤(pán)の変更を主張する必要がある。
しかし、一審の法廷弁論が終了した後に、「無(wú)効審判審決」が下され、しかも権利者が主張する請求項に影響が及ぶ場(chǎng)合は、どのように処理すべきか。以下の事例を通じて説明する。
瀋陽(yáng)飛行船數碼噴印設備有限公司と青島瀚澤電気有限公司の特許権侵害紛爭事件【(2019)最高法知民終161號】において、権利者の飛行船公司は一審の法廷弁論が終了する前に変更前の原請求項1をその主張する保護範囲とすることを法廷の場(chǎng)で明確にした。これについて、済南市中級人民法院の一審における見(jiàn)解は次のとおりである。無(wú)効審決が下された後に、係爭専利権1の內容はすでに変更が生じており、飛行船公司が本訴訟を提起した権利基盤(pán)が喪失していることから、原告の訴えを卻下する。飛行船公司は一審判決を不服として、上訴を提起した。
これについて、最高人民法院知的財産権法廷の見(jiàn)解は次のとおりである。係爭専利権が一部無(wú)効とされた後に、原審法院がまだ判決を下していない場(chǎng)合は、原審法院は法により権利者の飛行船公司に釈明し、権利者の飛行船公司が有効性を維持する請求項の範囲內でその保護範囲を主張する請求項を明確にしなければならない。しかし、原審法院は権利者の飛行船公司に請求項の手続法上の権利を再度明確にせず、釈明を経ずに飛行船公司の訴えを卻下する裁定を直接下しており、法律の適用の誤りに該當する。
つまり、「無(wú)効審判審決」が一審の法廷弁論が終了した後に下されたとしても、この時(shí)に、一審法院がまだ一審判決を下していない場(chǎng)合は、権利者は依然としてその主張する権利基盤(pán)を変更する権利を有する。権利者は無(wú)効審判結果を知ってから即座に権利侵害法院と連絡(luò )を取り、変更事項を告知しなければならない。
2.権利者は「無(wú)効審決を受け取った日から」権利基盤(pán)の変更を申請することができる。
無(wú)効手続きの雙方の當事者はいずれも専利の無(wú)効審決を受け取った日から3か月以?xún)趣吮本┲呢敭b権法院に訴訟を提起することができるが、言い換えると、無(wú)効審決はそれが下された日または受け取った日に発効するのではなく、審決取消訴訟の二審(終審)が終了した後に発効すると理解しなければならない。しかし前述の新たな請求項が依然として元の保護範囲內であり、最初から有効であるという理論基盤(pán)に基づけば、権利者が無(wú)効審決を受け取った日から権利基盤(pán)の変更を主張することができることは自明の理であり、當該無(wú)効審決の発効日を待つ必要はない。
例えば、特許仮保護期間実施料?特許権侵害紛爭事件【(2015)京知民初字第338號】において、(権利侵害訴訟の)被告が請求した無(wú)効審判に対して、専利復審委員會(huì )が無(wú)効審決を下し、(権利侵害訴訟の)原告が変更した請求項1-69に基づき引き続き専利権の有効性を維持した。その後、開(kāi)廷前會(huì )議において、(権利侵害訴訟の)原告は有効性を維持する請求項に基づき自身が主張する権利基盤(pán)をさらに明確にした。
これについて、北京知的財産権法院の一審における見(jiàn)解は次のとおりである。係爭専利権は被疑侵害製品の製造、販売時(shí)にはまだ有効期間內にあり、関連の無(wú)効審決においても(権利侵害訴訟の)原告が2015年7月6日に提出した請求項1-69に基づき係爭専利の有効性の維持がすでに決定していることから、関連の行政または司法手続きが係爭専利の有効性に対して否定的な評価を下したことを証明する証拠がない狀況の下で、係爭専利は本件において有効な専利として保護しなければならない。
特に、本件の審理と同時(shí)に、係爭専利の無(wú)効審決に関係する専利無(wú)効行政紛爭事件も本院が審理しているが、當該行政紛爭事件の審理過(guò)程において、本院は被告、専利復審委員會(huì )および(権利侵害訴訟の)原告の意見(jiàn)を十分に聴取するとともに、行政事件における関連の請求項の解釈、保護範囲の確定などの爭點(diǎn)の認定を本件の審理過(guò)程に組み入れ、無(wú)効審決の結論が正確であることを最終的に認定した上で、本件の審理を行った。
以上より、権利者は無(wú)効審決を受け取った日から、直ちに有効性を維持する請求項に基づきその主張する権利基盤(pán)を変更することができ、無(wú)効審決の発効日を待つ必要がないことが分かる。
3.権利者が無(wú)効手続きにおいて主體的に放棄した請求項は、専利権の保護範囲に再び加えることができない。
上訴人の山東陽(yáng)谷達盛管業(yè)有限公司、山東卓睿達盛管業(yè)有限公司と被上訴人の順?lè )焦軜I(yè)有限公司の実用新案権侵害紛爭事件【(2019)最高法知民終145號】における、最高人民法院の見(jiàn)解は次のとおりである。権利者が係爭専利の無(wú)効審判行政手続きにおいて請求項を削除する方式により民事権利侵害事件において権利を主張する根拠となる請求項を主體的に放棄した場(chǎng)合は、當該放棄行為が記載された行政決定の効力が最終的に確定したか否かにかかわらず、放棄された請求項はいずれも回復する可能性がなく、専利権侵害紛爭において再び専利権の保護範囲に加えることはできず、権利侵害の主張の根拠となる権利基盤(pán)はもはや存在せず、関連の訴訟上の請求は判決方式により卻下することができる。
4.権利者が訴えを卻下する裁定を受けた後に、原審で認定された事実と証拠資料は適切に保管する必要がある。
「先行裁駁、另行起訴」制度によると、係爭専利が後続専利の無(wú)効審決取消訴訟手続きにおいて「復活」した狀況の下で、権利者は別途訴訟を提起することができ、別途訴訟を提起する時(shí)間的な節目は上述の請求項の無(wú)効審決が発効した行政判決(一般的に審決取消訴訟の判決をいう――訳注)により取り消された時(shí)點(diǎn)である。
事件によっては審決取消訴訟の一審、二審さらには再審を経ることを考慮すると、発効した裁定?判決文を取得するには通常の場(chǎng)合2~3年またはそれより長(cháng)い時(shí)間を必要とするが、この期間に、権利者は被疑侵害に係る証拠および証拠物件を適切に保存し、証拠の毀損または滅失を防ぐことにより、後続の別件の訴訟における権益保護に差し障りがないようにしなければならない。
例えば、宇龍計算機通信科技(深セン)有限公司と小米通訊技術(shù)有限公司、小米科技有限責任公司、小米之家商業(yè)有限公司の特許権侵害紛爭事件【(2019)最高法知民終507號】において、係爭専利が一審手続きにおいて全部無(wú)効となり、一審法院が権利者の訴えを卻下する裁定を下し、原審原告の宇龍公司がそれを不服とし、上訴を提起したが、その請求內容は次のとおりである。本件は訴訟中止の裁定を下すべき事由に該當し、訴えを卻下すべき事由ではない。本件が訴えを卻下され、ひとたび法院が無(wú)効審決を取り消した場(chǎng)合には、宇龍公司は再度訴訟を提起するしかなく、間違いなく専利権者の負擔は増し、さらには保全された証拠の損壊または滅失のリスクが発生することにより、將來(lái)的に再度訴訟を提起した場(chǎng)合に権利侵害を判斷するための対比ができなくなる可能性があり、知的財産権の保護にとって不利である。
これについて、最高人民法院知的財産権法廷の二審における見(jiàn)解は次のとおりである。當該規定(《司法解釈二》第2條)はまさにこのような影響を緩和するために制定された「先行裁駁、另行起訴」制度に関する規定であり、専利権侵害訴訟の審理効率の向上にとって有益であるとともに、権利者の訴権に影響を及ぼさない。本件において、宇龍公司が訴訟を提起する根拠となる係爭専利の請求項はすでに國家知識産権局により無(wú)効とされており、原審法院がこれに基づき宇龍公司の訴えを卻下する裁定を下したことは上述の規定に適合する。上述の無(wú)効審決が最終的に発効した行政判決により取り消された場(chǎng)合は、宇龍公司は別途訴訟を提起し、引き続き小米通訊公司などに権利を主張することができ、その訴権と実體的権利はいかなる不利な影響も受けることはない。事件に係る証拠資料が損壊または滅失するか否かは未知の狀況に該當し、しかもこのような可能性があるとしても、當事者のために証拠を保存、提供しなければならず、それにより負う必要があるリスクは、本件が訴えを卻下する裁定を下されるか否かとは関係がない。
三.権利侵害訴訟手続きの被疑侵害者のための注意事項
1.係爭請求項が無(wú)効とされ、対比を経て明らかに権利非侵害であると判斷した場(chǎng)合は、法院に審理の継続と裁定?判決を要求することができる。
専利権侵害訴訟事件において、係爭専利権が無(wú)効とされた場(chǎng)合に、被疑侵害者が講じる最初の手順は権利侵害を判斷するための対比の実施でなければならず、対比を経て被疑侵害方案に権利侵害がないと確認することができる場(chǎng)合、特に一審または二審がすでに開(kāi)廷し権利侵害を判斷するための対比が行われた後は、被疑侵害者は法院に対して、訴えを卻下する裁定の申立てではなく、審理の継続および判決の意見(jiàn)を提出することができる。
北京微卡時(shí)代信息技術(shù)有限公司、卓望信息技術(shù)(北京)有限公司と財付通支付科技有限公司、騰訊科技(深セン)有限公司、凡客誠品(北京)科技有限公司の特許権侵害紛爭事件【(2020)最高人民法院知民終1325號】において、一審判決で事件に係る微信(Wechat)二次元コード決済技術(shù)方案が係爭専利権の保護範囲に該當しないことが認定された。権利者側は上訴を提起した。本件二審期間に、係爭専利権が無(wú)効とされた。
これについて、最高人民法院は二審判決において、「先行裁駁、另行起訴」規則に基づく法律の適用は狀況を區別し、狀況に応じて適用することにより訴訟効率を向上しなければならないとの見(jiàn)解を示した。
まず、対比を経て、被疑侵害技術(shù)方案が専利権の保護範囲に該當しない場(chǎng)合は、法院は被疑侵害技術(shù)方案と係爭専利は異なる技術(shù)方案に該當すると判定することができ、訴訟を中止しまたは訴えを卻下する裁定を下す必要はなく、被告の権利非侵害を直接判定することができる、つまり訴訟上の請求を卻下することができる。
次に、対比を経て、被疑侵害技術(shù)方案が係爭専利権の保護範囲に該當し、さらに被疑侵害者が無(wú)効審判を請求し、専利権の安定性を抗弁事由として提出した場(chǎng)合には、法院は専利権の安定性を考慮する必要があり、審理の中止または國家知識産権局が無(wú)効としてから、司法が専利権の安定性の効力を確認するまでに訴えを卻下する裁定を下すことができる。上述の請求項の無(wú)効審決が、発効した行政判決により取り消されたことを証明する証拠がある場(chǎng)合には、権利者は別途訴訟を提起することができる。
筆者の考えでは、當該事例は「先行裁駁、另行起訴」規則の適用に新たな処理の考えを提示するものである。権利非侵害を認定することができる狀況の下でも、依然として訴えを卻下すれば訴訟効率は低下するが、この時(shí)に法院が技術(shù)方案の間の共通點(diǎn)と相違點(diǎn)を速やかに確認することができれば、當事者にその商業(yè)行為の適法性に対して合理的期待を持たせることができ、それにより雙方の當事者間の紛爭を実質(zhì)的に解決することができる。
2.係爭請求項が無(wú)効とされた場(chǎng)合は、権利侵害法院に訴えを卻下する裁定の申立てを提出することができる。
前述の最初の手順において、被疑侵害方案が権利侵害を構成しないことを説明するのに十分な理由がなく、特に一審法院がまだ係爭専利と被疑侵害技術(shù)方案に対して権利侵害を判斷するための対比を実質(zhì)的に行っていない狀況の下で、被疑侵害者は権利侵害事件を審理する法院に「無(wú)効審決」をできる限り早く提出し、訴えを卻下する裁定を申し立てることができる。権利侵害紛爭事件を審理する法院は通常の場(chǎng)合「先行裁駁、另行起訴」規則に基づき、権利者の訴えを卻下する裁定を下す。
例:江蘇通領(lǐng)科技有限公司と公牛集団股份有限公司などの専利権侵害紛爭事件【(2018)蘇01民初3440號などおよび(2020)最高法知民終227號など】において、通領(lǐng)公司は2018年12月に南京市中級人民法院で公牛に対するコンセントの安全性に関する10件の専利権侵害訴訟を提起し、賠償請求金額が9億9,900萬(wàn)元であった。この一連の事件に関係する専利は、特許ZL201010297882.4「サポートスライド式安全シャッター」と実用新案ZL201020681902.3「電源コンセント安全保護裝置」の2件である。2019年7月に、國家知識産権局が第40759、40829號無(wú)効審決を下し、上述の2件の専利の全部を無(wú)効とした。
実用新案ZL201020681902.3「電源コンセント安全保護裝置」に関する5件の訴訟において、南京市中級人民法院は一審で通領(lǐng)公司の訴えを卻下した。通領(lǐng)公司は上訴を提起し、一審の「民事裁定書(shū)」を取り消し、事件の南京市中級人民法院への差戻しを請求した。これに対して、最高人民法院知的財産権法廷は2020年4月20日に終審の裁定を下し、通領(lǐng)公司の上訴を卻下し、原裁定を維持した。
特許ZL201010297882.4「サポートスライド式安全シャッター」に関する5件の訴訟において、通領(lǐng)公司は無(wú)効にされことを理由として、一審法院に訴えの取下げを申請した。2019年7月に、南京市中級人民法院は一審で「民事裁定書(shū)」を発出し、通領(lǐng)公司の訴えの取下げの申請を認めた。
ある特定の狀況の下で、原告は主體的な訴えの取下げを選択することがあり、法院も通常は訴えの取下げを認める。したがって、権利侵害訴訟の一審において、権利者が主體的に訴えを取り下げても、法院が訴えを卻下する裁定を下しても、この2種類(lèi)の処理方式の法律効果は共に同じであり、つまり係爭専利が後続専利の無(wú)効審決取消訴訟手続きにおいて「復活」した狀況の下で、権利者は別途訴訟を提起することができる。
しかし、権利侵害訴訟の二審手続きにおいて、権利者が訴えの取下げを申請した場(chǎng)合は、被疑侵害者の処理方式はやや異なる。
?。?)訴えの取下げの申請に同意しない場(chǎng)合は、二審法院の通常の方法は権利者の訴えを卻下する裁定を下すとともに、併せて一審判決を取り消すことである。係爭専利が後続専利の無(wú)効審決取消訴訟手続きにおいて「復活」した狀況の下で、権利者は別途訴訟を提起することができる。
?。?)訴えの取下げの申請に同意する場(chǎng)合には、二審法院は訴えの取下げを認めるとともに、併せて一審判決の取消しの裁定を下すことができる。さらに権利者が二審手続きにおいて訴えを取り下げた後に再度訴訟を提起した場(chǎng)合は、人民法院はこれを受理しない。
3.係爭請求項が終審の行政判決により実質(zhì)的な権利付與要件を備えていないことが認定された場(chǎng)合は、「先行裁駁、另行起訴」規定を參照、適用することができる。
ある特定の事件において、國家知識産権局の係爭専利権に対する「無(wú)効審決」により専利権の有効性が維持されたが、終審の行政判決により當該決定が取り消され、係爭専利の請求項が実質(zhì)的な権利付與要件を備えていないことが認定されることがある。このような狀況の下で、被疑侵害者は「先行裁駁、另行起訴」規定を參照、適用することを主張し、終審の行政判決に基づき権利者の訴えの卻下を申し立てることができる。
例えば、曹桂蘭、胡美玲、蔣莉、蔣浩天と重慶力帆汽車(chē)銷(xiāo)售有限公司、重慶力帆乗用車(chē)有限公司、江蘇驊盛車(chē)用電子股份有限公司、南京九華山汽車(chē)銷(xiāo)售服務(wù)有限責任公司、力帆実業(yè)(集団)股份有限公司、杭州亜凡汽車(chē)有限公司の特許権侵害紛爭事件【(2018)蘇民再47號】において、係爭専利はZL200710019425.7「シャークフィン型アンテナ」の特許権である。原國家知識産権局の第25637號審決により係爭専利の有効性が維持された。力帆公司は當該無(wú)効審決を不服として審決取消訴訟を提起し、さらに一審の北京知的財産権法院および二審の北京市高級人民法院で連続して敗訴したが、最高人民法院は2019年12月の再審において、當該審決の関連の請求項1の進(jìn)歩性の認定に誤りがあると判斷し、當該審決を取り消した【(2019)最高法行再268號】。
江蘇省高級人民法院の再審における見(jiàn)解は次のとおりである?!赶刃胁民g、另行起訴」規定の目的は専利民事権利侵害訴訟事件における決定が先送りになる、手続きが先に進(jìn)まないという問(wèn)題を回避することである。専利復審委員會(huì )が審決を下し、係爭専利権の有効性が維持されたが、當該審決が最高人民法院の終審の行政判決により取り消された。當該行政判決の判決理由から見(jiàn)ると、最高人民法院は係爭専利の請求項1は進(jìn)歩性という専利の実質(zhì)的な権利付與要件を備えていないことを理由に當該審決を取り消した。以下の要素を考慮し、本件は當該法條を參照、適用する要件を備えており、曹桂蘭など4名の係爭専利の請求項1に基づく訴えは卻下する。
しかし、注意すべきは、被疑侵害者が別途訴訟を提起するための根拠が終審の行政判決ではなく、一審の未発効の行政判決である場(chǎng)合は、「先行裁駁、另行起訴」規定を參照、適用してはならないということである。
例えば、再審請求人の無(wú)錫國威陶瓷電器有限公司と被請求人の鎮江市志嘉電器有限公司などの実用新案権侵害紛爭事件において、専利復審委員會(huì )第24085號審決で係爭専利の請求項1-6の有効性が維持され、北京知的財産権法院71號行政判決で第24085號審決が取り消されたとともに、判決が変更され、係爭専利の請求項1の無(wú)効が認定された。しかしその後専利権者は一審判決に対して上訴を提起した。
これについて、江蘇省高級人民法院の二審の見(jiàn)解は次のとおりである。北京知的財産権法院が専利の権利付與と権利確定に係る行政事件の専屬管轄法院であり、つまり法により行政客體が不服とする専利復審委員會(huì )の無(wú)効審判請求審決に対して司法審査を行う司法機関であることを考慮すると、當該法院が行う専利の請求項が有効であるか否かの認定は、手続き上で専利権確定の行政手続きにおける最終的な認定により近いものになる。したがって、本件の狀況と上述の司法解釈に定める適用事由に本質(zhì)的な違いはなく、上述の司法解釈を參照、適用することができる。
最高人民法院は再審で二審判決を取り消し、次の點(diǎn)を強調した?!赶刃胁民g、另行起訴」規定の適用は司法解釈の上述に定める制度の目的および適用要件を考慮し、規定の適用後に起こり得る行政と司法手続きの繰返し、紛爭の実質(zhì)的な解決に不利になるなどの問(wèn)題を回避しなければならない。具體的に本件について言うと、當事者が一審判決を不服として上訴を提起し、第24085號審決の後続の審決取消訴訟はすでに二審手続きに進(jìn)んでいる。したがって本件に関係する狀況と《解釈二》第2條に定める「権利者が専利権侵害訴訟において主張する請求項が専利復審委員會(huì )により無(wú)効とされた場(chǎng)合」を適用する前提は一致しない。つまり、本件の狀況は《解釈二》第2條の「先行裁駁、另行起訴」規定の制度の目的と適用事由に適合せず、二審法院が當該規定を參照、適用することには、法律の適用に誤りが存在する。
4.係爭専利権が無(wú)効とされたとしても、被疑侵害者は依然として権利非侵害確認訴訟を提起する権利を有する。
係爭専利権が無(wú)効とされた場(chǎng)合において、被疑侵害者が法院の訴えを卻下する裁定により自己の生産?経営を合理的に期待する安全な狀態(tài)を維持することができないと判斷したときは、権利非侵害確認訴訟を提起することもできる?!赶刃胁民g、另行起訴」規則は被警告者が専利権非侵害確認訴訟を提起する場(chǎng)合の障害を構成しない。
東莞銀行股份有限公司と張學(xué)志の専利権非侵害確認請求紛爭事件【(2020)最高法知民終225號】において、張學(xué)志は無(wú)効とされた専利権に基づき東莞銀行に権利侵害警告書(shū)を発送し、その中で自身がすでに係爭専利の無(wú)効審決について北京知的財産権法院に訴訟を提起したことを告知した。張學(xué)志はさらにApple社に東莞銀行のアプリが権利侵害に抵觸するとの苦情を申し立てた。東莞銀行は警告書(shū)を受け取った後に張學(xué)志に催告書(shū)を発送し、関連の苦情を直ちに取り下げ、または速やかに人民法院に関連の権利侵害訴訟を提起することを要求した。
広州知的財産権法院は一審で東莞銀行の訴えを受理しないとの裁定を下した。その理由は、係爭専利がすでに全部無(wú)効とされた狀況の下で、東莞銀行がその専利権非侵害を確認する訴訟上の請求は事実に基づく根拠に欠けることである。
これについて、最高人民法院の二審における見(jiàn)解は次のとおりである。専利権の無(wú)効審判請求審決はひとたび下されれば直ぐに法的効力を生じるというものではなく、法律に定める提訴期間が満了し、當事者が訴訟を提起せずまたは當該決定を維持する裁定?判決が発効した後に初めて、當該決定は法的効力を生じる。したがって、専利権の無(wú)効審決が発効していない狀況の下で、専利権の有効性を否定する効力は生じず、権利者が発送した権利侵害警告は依然として権利基盤(pán)を有する。
また、判決では「先行裁駁、另行起訴」規則を専利権非侵害確認訴訟に適用するか否かの問(wèn)題について強調されており、それによると、「先行裁駁、另行起訴」規則の目的は専利権侵害紛爭事件の審理効率を向上させ、審理期間が比較的長(cháng)いことによる影響をできる限り緩和することであり、司法解釈に定める専利権者が提起した権利侵害訴訟にのみ適用される。被警告者が提起した専利権非侵害確認訴訟の目的は専利権者が発出した権利侵害警告により被警告者が置かれる不安定な狀況を排除することである。両者の制度の目的が異なることから、司法解釈の當該條項に定める「先行裁駁、另行起訴」は被警告者が専利権非侵害確認訴訟を提起する場(chǎng)合の障害を構成しない。法院が審理を経て被警告者の行為が専利権侵害を構成しないと認定した場(chǎng)合は、権利非侵害を確認する旨の判決を直接下すことができる。法院が審理を経て被警告者の行為が専利権侵害を構成すると認定した場(chǎng)合は、訴訟結果の繰返しを回避するために、審理を中止し、専利権確定審決取消訴訟の結果を待つことができる。
四.まとめ
本文では、司法実務(wù)における「先行裁駁、另行起訴」規則の応用に関する典型事例の分析、総括を通じて、専利権侵害訴訟の権利者と被疑侵害者が専利民事行政交錯事件を処理するための複數の経験を紹介した。
権利者への參考として、(1)主張の根拠となる請求項に変化が生じた場(chǎng)合は、速やかに権利侵害法院に権利基盤(pán)の変更を主張しなければならない。(2)権利者は「無(wú)効審決を受け取った日から」権利基盤(pán)の変更を申請することができる。(3)権利者が無(wú)効手続きにおいて主體的に放棄した請求項は、専利権の保護範囲に再び加えることができない。(4)権利者が訴えを卻下する裁定を受けた後に、原審で認定された事実と証拠資料は適切に保管する必要がある。
被疑侵害者の參考として、(1)係爭請求項が無(wú)効とされ、対比を経て明らかに権利非侵害であると判斷した場(chǎng)合は、法院に審理の継続および裁定?判決を申し立てることができる。(2)係爭請求項が無(wú)効とされた場(chǎng)合は、権利侵害法院に訴えを卻下する裁定の申立てを提出することができる。(3)係爭請求項が終審の行政判決により実質(zhì)的な権利付與要件を備えていないことが認定された場(chǎng)合は、「先行裁駁、另行起訴」規定を參照、適用することができる。(4)係爭専利権が無(wú)効とされたとしても、被疑侵害者は依然として権利非侵害確認訴訟を提起する権利を有する。
注釈
【1】《専利権侵害紛爭事件の審理における法律の応用に係る若干の問(wèn)題に関する最高人民法院の解釈(二)》
第2條 権利者が専利権侵害訴訟において主張する請求項が専利復審委員會(huì )に無(wú)効とされた場(chǎng)合は、専利権侵害紛爭事件を審理する人民法院は権利者の當該無(wú)効請求項に基づく訴えを卻下する裁定を下すことができる。
上述の請求項を無(wú)効とする審決が発効した行政判決により取り消されたことを証明する証拠がある場(chǎng)合には、権利者は別途訴訟を提起することができる。
専利権者が別途訴訟を提起した場(chǎng)合には、訴訟時(shí)効期間は本條第2項における行政判決書(shū)の送達日から計算する。
【2】當該事例の出典は「最高人民法院知的財産権法廷裁定?判決要旨(2019)」裁定?判決規則の12である。
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